4. ハウスにおけるホスピタリティ
〜研修会での話し合いをもとに〜

① 日常性の再構築

家族が経済的・身体的・精神的に大きな不安を抱えたままでは、子どもの治療に向かう気持ちを支えることができません。子どもの治療を支えるために、付き添っている家族の環境を整えることが必要です。

そこで求められるのが「日常性の再構築」です。ここでいう日常性とは、ゆっくりお風呂に入ったり眠ったりすることで疲れを癒せることや、家族そろって食事をとったりして家族団らんができること、友人知人や隣近所などの地域と支え合いながら生活していけることなど、生活に不可欠な要素です。自宅を離れて子どもを看病する家族は、こうした生活に不可欠な要素が満たされていない状況にあります。日常性が失われると、見えない疲れがたまり、家族の気持ちが不安定になってしまいます。

ただし、子どもが病気になる前の状況では、こうした日常性の大切さを意識することはないと思います。そのため、自宅を離れて闘病生活を支える状況になっても、最初は、自分の日常性が失われていることに気付かない場合も多くあります。しかし、見えない疲れは精神的に人を追い詰めます。そこ で、付き添い家族自身が意識的に自分の日常を再構築していくことが必要になります。この点に、ハウスが果たすべき役割があります。

ハウスの役割は、単に安く泊まれだけでなく、「病院近くのわが家」として安心して休める環境を提供することによって、付き添い家族の気持ちを支え ることにあります。ハウスで少しでも日常に近い環境で過ごすことで、心も体も休ませることができ、気持ちが安定しやすくなります。家族が自らの日常性を再構築することで、子どもの治療に向かう気持ちを高めていくことにつながると考えています。

なお、日常性を「取り戻す」ではなく「再構築」としたのは、闘病生活を送っている家族にとって必要なのは、子どもが病気になる前の「日常」に戻ることではなく、子どもの病気を受け入れて看病していくという新しい「日常」を組み立てていくことだからです。

ハウスは日常性を再構築していくための基盤となるよう、「病院近くのわが家」として、自宅のように日常の当たり前のことができる場所である必要があります。そのために、「② 相手の立場に立つ」〜「⑦ 安全にするごせる」の6項目について十分に配慮することが求められます。

ハウス利用者からの声
  • 病気の子への不安、家に置いてきた家族への不安、慣れない病院生活への不安・・・不安につぶされ涙がとまらない毎日でした。でも手術を受けて小さなからだで一生懸命息をしている子どもを見て、「がんばったね。ママもがんばるよ」と気持ちを切り替えることができました。そして、今回ハウスで初めて過ごしました。ここがあったから、気持ちの切り替えもできたのかもしれません。それだけ、この場所は、私の心を落ち着かせ、リフレッシュさせてくれました。自分を囲むすべての雰囲気が、私の心を和ませてくれた気がします。この部屋には、あたたかさがあります。ぬくもりがあります。

研修参加者のアンケートより【キーワード:日常性】
内容
  • ハウスでは家のような日常が可能

  • 日常を失った病者に対して、日常性への復帰

  • ハウスの普通は非日常を送っている家族にとって難しい

  • おはようございます、いってらっしゃい、お帰りなさい等のあいさつ、笑顔

  • 普通のごはん、普通の会話

  • 日本各地からいらしていますが、温かく迎える笑顔や心で過ごしてもらうよう心掛けている

  • そこで生活を送れる体制が整っていること

  • 特別ではなく

大切だと思う理由
  • 日常を取り戻すことで平常心へ

  • 病気・入院という非日常が続く中での「日常」は基調であり、大切

  • 病院が非日常なのだから、ハウスでは日常的(普通)に過ごしていただきたい

  • わが家、家族を取り戻すことが大事

  • それが心地よい

  • 非日常の中にあるのでなるべく生活を続ける

  • でしゃばらず、裏方で誠意を持って見守る

  • それぞれのキーワードに関わることですが、非日常にある家族の方がホッとできる時間をもつことで、闘病生活を乗り越える力を復活していただきたいと考えます

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