4. ハウスにおけるホスピタリティ
〜研修会での話し合いをもとに〜
ハウスにおけるホスピタリティについて、今回の研修会で議論を深められたと考えています。言葉にしづらいホスピタリティについて、今回初めて話し合う事ができました。研修会の場や参加者のアンケートから、ハウスのホスピタリティに関して、多くのキーワードを抽出することができました。
結論を導き出せたわけではありませんが、日本でのハウス活動が20年間継続してきたことで、ハウスにおけるホスピタリティについて言語化する第一歩を踏み出せたと感じています。
本報告書では、ハウスのホスピタリティをまとめるにあたり、研修会アンケートの回答結果にもとづいて検討しました。具体的に参照したアンケートの質問項目は次の通りです。
ハウスでのホスピタリティについて、大切だと思うことを5つ教えてください。
それぞれの「キーワード」「内容」「大切だと思う理由」を記入してください。
アンケート結果にもとづいて、右図のように、まとめました。ハウスにおけるホスピタリティを一言で表現すると「病気の子どもと家族を大切に受け入れる気持ち」であり、そのための具体的な検討事項を「日常性の再構築」を軸とする7項目にまとめました。
その7項目を説明する前に、まずは自宅を離れて闘病生活を送る子どもと家族の状況についてイメージを共有したいと思います。その後、今回の研修会での話し合いを踏まえたハウスにおけるホスピタリティ実現のための検討事項について説明していきます。
闘病中の子どもに付き添う家族の状況
自宅を離れて闘病生活を支える家族は、経済的・身体的・精神的に大きな負担を突然抱えることになります。
経済的には、自宅と入院先との二重生活のため、生活費が大きくかさみます。地元に残してきた家族との電話代や、地元との往復に必要な交通費、また付き添い生活では、ホテル泊や外食になってしまい、割高の生活費が必要になります。病院での保険外の治療費や子どものための生活用品などの負担もかさみます。
身体的には、慣れない土地での交通の心配や、病棟の中で付き添う場合には、静かなところで寝たり、お風呂に入ることもできなくて、体をゆっくり休ませることが難しい状況におかれています。
精神的には、まず、子どもの病気についての心配があります。子どもが大きな病気になったという現実を受け止めきれないことも多くあります。先行きの見通しも立たずに、教育のことも含め、家族は大きな不安を抱えます。また、病棟生活は、カーテン1枚を挟んで他の患者さんと相部屋だったり、手料理を作ることもできず、それまでの日常のように自分の自由にできることも減ってしまいます。入院治療中の子どもたちにとっても、お母さんの手料理を食べたり、自由にゲームができたり、お風呂に入れたり、誰にも気兼ねせずに家族に甘えられることなどは、カーテン1枚で仕切られている病棟では難しいことです。
このような状況の変化のために、自宅を離れて子どもの闘病生活を支える家族の「日常性」は失われ、非日常の中におかれてしまうことになります。