4 対応に苦慮する利用者
【事例発表 概要】 Dハウス・ハウスマネージャ
- 心臓病のお子さんが検査と手術で入院をするので、母(Aさん)がハウス利用希望。
- お子さんは少し発達障害があり、慎重に治療している様子。
- 家族構成は、父、母、姉。そのほか、ハウス近郊に住む叔父がこの家族をサポート。
- 利用の予約日の前日に、母、父、叔父が突然ハウスに来訪。叔父と一緒に病院とハウスの場所を案内してもらったので、このままハウスに泊まりたいという希望だった。予約の変更は事前に連絡をお願いしている。ただし、ちょうどその日は部屋の空きがあったので、次は事前に連絡してから来てくださいとお願いをして、ハウスをご利用いただくことにした。ハウスに泊まったのはAさんのみ。
- 翌朝、共有スペースのキッチンを使っていた別のご家族から、Aさんが急に具合が悪くなって横になっていると、ハウスマネージャに連絡が入った。
- ハウスマネージャがAさんと話したところ、Aさんには持病があり、服用する必要のある薬を持参していなかったことが、その時点で初めてわかった。
- Aさんご自身が自己管理の意識がとても低く、病気に対しても、自分の体調に関しての判断が甘い方だった。そのため、持病について、事前に情報を得ることはできなかった。
- Aさんに状況を聞くが、どうしたらいいかわからないということだったので、父や叔父の携帯電話や、父の勤務先にも連絡をしたが、つながらない。
- ハウスマネージャが、いくつかの病院に問い合わせたが、持病があるのに自己管理できない人を急に診察することはできないと断られた。結局、ある病院で診察を受けることができ、点滴治療を受けて、ハウスに戻ってきた。
- 体調を自己管理できない人をその状態のままハウスで受け入れることは難しいと考え、その日のうちに、Aさん、父、叔父の3名と面談した。
- 面談時に伝えたのは、ハウスを利用するときには、自己責任で自分の体調管理をしてもらう必要があること。その上で、Aさん一人でハウスを使うということに心配があったので、父も極力一緒に宿泊をして、サポートをしてもらえるようお願いした。
- ハウスマネージャは利用者の生活に踏み込まないようにしているが、Aさんへは極力お声がけをして、体調を確認するようにした。
- 対応に苦慮する状況が発生したときに、その日のうちに面談をして、ハウス利用は自己責任が前提となっていることを理解してもらい、協力してもらうためのコミュニケーションをとれたことが良かったと思う。
- ただ、家族の状況やコミュニケーション力など個別性があるので、どの家族でも同じ対応になるとは一概には言えないと思う。
- 今回はハウスマネージャが直接病院に連絡をとったが、どこまでハウスマネージャがやるべきなのかと迷いながらも、具合の悪い人を放っておけないという気持ちで動いた。
- 今後の課題としては、必要な方にはハウスを利用してほしいと思う一方で、安心・安全にハウスで過ごしてもらえるよう、リスクの見極めと、リスクへの対応を考えていくことの必要性を改めて感じた。
分科会でのディスカッションのポイント
利用者の事情を理解
ハウス利用の申込段階で、ハウスの形態や決まりごとについてご理解いただけない場合については、慎重にコミュニケーションを重ねて対応しているという意見がありました。ただ、初めてハウスを利用する場合や、特に電話で申込を受けている場合は、実際にハウスを利用するまで事情が顕在化しないことも多いということも共有しました。
ハウス利用が始まってから、決まりごとが守られない状況になった場合は、どうしてそういう状況が生じているのか、利用者の事情をよく理解することが必要であるという意見が多く出ました。利用者と面談をしたり、ハウスでの過ごし方を見守ったり、病院と連携をして、利用者の事情を理解するという意見がありました。そして、それぞれの家族の事情を勘案して、ケースバイケースで対応していくことの重要性を再確認しました。
- パンフレットに決まりごとは書いてあるが、利用者一人ひとりの対応が違うので、お互いの立場にたって対応していくことが大事だと思いました。リスクと受け入れを状況によって判断していくことが必要です。
- 利用者のご家族の中でも、誰をキーパーソンとするのかというアセスメントは必要な方にハウスを使っていただくためにも重要なことだと感じました。より幅広い利用者の方を受け入れていくことは、ますます運営者側のスキルが問われると思いました。
- 十人十色の利用者に対して、適切、かつ迅速な個別対応が必要。ただし、それ以前にハウス運営(利用者も運営に責任あり)の理念を利用者に理解してもらうことが重要。
病院・行政等との連携
ハウス利用者への対応が難しくなった場合は、病院の主治医や病棟看護師長、ソーシャルワーカーなどと相談した方がよいという意見が多く出ました。また、地域の福祉行政などとの連携が必要な場合にも、外部と連携をとっていく重要性が議論されました。
ハウスだけで問題を解決しようとせずに、病院での状況、病児の状況なども理解して、必要であれば病棟・行政等と連携して対応していくことが重要です。また、そうした対応ができるように、ハウス運営スタッフが能力を向上させることが必要であろう、という意見も出ました。
- 病院との連絡を常に維持することが大事。
- ハウスと病院との連携においては、メディカル・ソーシャル・ワーカー(MSW)の働きを利用する。生活モデルと医学モデルをつなぐことは難しい。個々の働きは違う。しかし、連携されないと利用者のライフスタイルを共有することはできない。リスク管理においてはMSWをチームプレイに取り入れる必要がある。
- 病院や専門性のあるスタッフとの連携が問題解決につながるとわかった。
- 困ったことがあれば、病院のソーシャルワーカーなどに相談できるよう、病院と連携することが大切。