3 初期対応(初めてハウスを利用する人への対応)
【事例発表 概要】 Cハウス・ハウスマネージャ
- Cハウスは、2008年6月オープン。病院から徒歩2~3分のところに立地。
- Cハウスの基本理念はハウスの玄関に掲げて、私たちの指針にしているほか、利用者の方にもご理解いただくようにしている。
- 初めて問い合わせを受けるケースは、概ね4種類に分けられる。1つ目は、小児の緊急搬送。2つ目は、小児の場合で、病院の先生または、以前にハウスを利用された方から紹介を受けて、直接お電話される方。3つ目は、成人。成人の場合は、今のところ病院の地域連携室を通された方のみに限定している。4つ目は、成人で直接問い合わせをされてくる方。
- 初期対応の際に、必須として伝えていることは、「料金」「開錠・施錠時間」「外出簿・鍵」「禁酒・禁煙」。
- 料金
支払いは、毎週月曜日に前日日曜日までの1週間分の料金を精算するということでお願いしている。 - 開錠・施錠時間
ハウスの入口にシャッターが付いていて、そのシャッターの開錠が朝7時、施錠が夜10時。緊急の場合、病院から帰るのが遅くなる場合や、離島へ船で帰るために早朝出発になる場合などは、利用者のニーズに合わせて対応している。 - 外出簿・鍵
外出する際は記録用紙に書いてもらい、鍵を預かるようにしている。スタッフは通常1人体制のため、利用者がハウス内にいるかどうかを確認できるようにしている。火災などで緊急避難する際には、お部屋にいる方から優先的に誘導するということにしている。消防訓練を年2回行い、またAEDも備えつけて、スタッフは講習会にも参加している。 - 禁酒・禁煙
ハウスは病児も滞在するので、禁酒・禁煙を守っていただくため、決まりごとを明記した誓 約書を提出していただいている。 - 利用者に十分ご理解いただけず困っていることは、「帰宅時間の遅延」「居室での飲食」「面会時間等」「ハウス内での飲酒・喫煙」「居室の清掃協力」「居室の定員」「短期利用家族へのオリエンテーション」の7点。それぞれスタッフで相談して対応している。
- 帰宅時間の遅延
病院にいて遅くなる場合は、連絡があれば待つようにしている。ただ、中には食事で遅くなるという方もいる。遅くなる場合は必ず電話くださいとお願いしているが、電話をしたら遅くなっても大丈夫、待っていてくれるという自己判断をする方もいることに困っている(特に長期滞在者に多くみられる)。 - 居室での飲食
衛生管理のため、また家族同士の交流の場になってほしいという思いから、食事は共有スペースの利用をお願いしている。しかし、お部屋に運んでこっそり食べてしまうという方もいる。 - ハウスでの利用者との面会時間等
面会も共有スペースで、とお願いしている。しかし、遅い時間から面会する場合や、荷物を運ぶからと言って部屋に入って、そのまま長く滞在する場合もある。 - ハウス内での飲酒・喫煙
駐車場から禁酒・禁煙でお願いをしているが、なかなか守られていない。今では、門扉の外に灰皿を常備するようにしている。灰皿を置かないと外に散らかってしまうので、喫煙場所を指定したという苦肉の策である。 - 居室の清掃協力
次に利用する方のために清掃に協力してもらっている。説明はするが、人によって、「きれいさの基準」が違うため、同じような清掃の状況は求められない。 - 居室の定員
利用申込の際に人数を確認するようにしている。しかし、家族によっては、どうしても大人数でないと無理という方もいるので、そういう場合は相談して受け入れる場合もある。 - 短期利用家族へのオリエンテーション
緊急搬送等での短期利用家族は、病状に不安を感じている場合が多く、またこちらで家族の状況を詳しく把握できないので、対応が難しいと感じている。短く的確に最重要事項を説明するようにしている。
- 帰宅時間の遅延
分科会でのディスカッションのポイント
利用者対応の基本理念
ハウスはホテルとは違って、一種の「コミュニティ」となっています。寄付者、ボランティア、そして利用者本人も協力者となっていることで、ハウス運営が成り立っています。利用者にもその基本理念をよく理解してもらえるように、ハウスのことを説明する必要があるという意見が多く出ました。
- ハウス運営の基本理念(利用者も運営に責任あり)を理解してもらうことが重要。
- 利用者もハウスの一員としてハウスを使ってもらいたいと思いました。受付の時にちゃんと説明をして利用してもらう。ハウスを必要としている利用者の立場になる。
伝える姿勢
ハウスでは複数の利用者との共有スペースがあったり、利用者からも運営にご協力いただく必要があることがあります。そのため、ハウス利用上の決めごとがありますが、その意味合いが大切になるという意見が出ました。ハウス運営者が「楽」をするためのルールではなくて、利用者のためにハウスがあるのだから、ハウスを利用する方々が安心・安全に過ごせるようにするためであるという前提に立つことが重要です。そうすることで、決めごとを守ることが、結果的にハウスを利用するご本人のためになるということが伝わると、利用者も理解して協力していただきやすくなると考えられます。
- ハウスをわかってもらうために、利用者をわかってあげること。
- ハウスを利用する上での規則を守ることは利用者にとって快適で安全な生活を送る中で重要であるということを、施設側が利用者へ周知することは大切だと感じました。利用者によって感覚や認識も異なるため、その人自身の思いを受け止めつつも、親として利用者としての自覚を持ってもらう言葉がけが重要であると感じました。
- 利用者のためのルールであることを伝える必要がある。事業者の都合ではないことを伝えることで信頼し、理解される。
伝えることの明確化
ハウスを初めて利用する人、特に緊急でハウスを利用する人は、なかなかハウスのイメージを持てず、また説明をしっかり聞ける状況にないことも多くあります。そこで、最初に伝えるべき、ハウスの決まりごとを明確にする必要があるという意見が多く出ました。例えば、ハウスでは次の利用者のために掃除にご協力いただくという決まりごとがあることが多いと思いますが、「きれいさの基準」は人によって違うので、具体的に掃除してほしいところや注意点を伝えるようにしてはどうかという意見が出ました。
ただし、病気の子どもの病状がよくなかったりする場合など、ハウスを利用している家族に余裕がない場合などは、決めごとを超えて、ケースバイケースで対応していく必要性も再確認しました。
- 初期対応のルールの明確化は必要。
- 基本的な利用マニュアルの整備が重要であり、ハウス運営の基本理念に基づき、利用者に目線を合わせた面談が必要。
- 関わる人(私どもの場合ボランティア)全員がマニュアルを作成し、それを利用者に理解していただき、各部屋にもマニュアルを常備してあります。結果ほとんどトラブルはありませんでした。
- 規制はもうけるが個々に対応。
わかりやすく伝える工夫
特に緊急で入院してハウス利用が始まるケースなど、ハウスの使い方・決めごとを十分に理解してもらうための時間と気持ちの余裕がない場合の工夫についても意見交換ができました。例えば、事例発表にあったように、最低限理解してほしいルールを小さなカードに簡潔に書いて渡すなどの工夫です。
- 最低限守ってもらいたいルールを書いた名刺サイズのリーフレットを渡すという案は参考になった。必ずしもすべての利用者さんが冷静な状態でいられるわけではないので、紙に書いてあるということで、ルールの徹底になるはず。
- カードでの提示。混乱時の説明の理解のあやふやさを知っておく。