2 きょうだい児保育
【事例発表 概要】 発表者:Bハウス理事
- ハウスの設計段階から、きょうだい児保育を想定し、ハウス内の多目的ホールを利用して保育事業をしている。
- ハウスは病院から徒歩圏内に立地している。
- 保育時間は、木・金曜日の、朝9時から午後3時まで。ただし、緊急の場合など、保育士の都合もあるが、なるべく要望に添うように努力している。
- 保育の対象は、ハウス利用中のきょうだい児のほか、ハウスは利用していないが病院入院あるいは、通院している病児のきょうだい児も。
- ハウスには5人の保育士が登録している。その中に保育コーディネーターが1人いる。
- 保育を希望する場合は事前に電話をしてもらい、時間や人数、預かるきょうだい児について注意すべき点などを伝えてもらう。保育コーディネーターがその話を聞いて、適切な保育士にハウスで待機してもらうという方法で実施している。
- 保育事業を始めて1年半経過した。昨年1年間で、保育件数310、保育人数345。ただし、ハウス利用中のきょうだい児を預かるケースは非常に少なく、4~5件である。
- 保育ニーズとしては、母親が入院中の病児と面会する間、あるいは通院受診に時間がかかる場合が多い。また、緊急に通院しなければならない場合に、必要に迫られた保護者から要望がくることもある。
- きょうだい児はストレスが非常にたまっていること。預かるきょうだい児に対するホスピタリティを最重要点として考えている。例えば、泣いていたら、まず抱っこしてあげたりする。普通の保育所では大人数の子どもを預かっているためにできないような細かい気配りをするように心がけている。
- 母親の精神的な負担。母親は、病児と、ストレスのたまったきょうだい児を育てている。二重のストレスで、精神的なゆとりがないと感じている。
- 感染症の対策。ハウスの設計段階から感染症対策を考慮していたので、他の部屋から独立して日常生活を送れる部屋が2つある。感染症に要注意の家族は、この部屋を利用する。ハウスの保育士は、感染症について非常に責任ある言動をしている。ただ、母親は病児のこともあり、感染症については非常に神経質なので、きょうだい児に感染症の可能性がある場合は、母親の理解・協力を得ているので心配は少ない。
- 緊急の保育の要望や、逆に、急にキャンセルされることも非常に多いこと。
- 経済的な基盤が弱いということ。この1年間は、保育料40万円、経費140万円で、100万円の赤字。ただし、ハウス事業が県立の病院との共同事業になっているので、県から5年間限定で270万円の支援金を受け取っている。それをハウス運営と保育の両方にあてている。また、個人の方、団体の方から義援金、支援金をいただいて、運営が成り立っている。
- 保育士の確保。一般の保育士と違って、きょうだい児を預かるためには、ボランティア精神が必要。そして、経済的にも時間的にも余裕があること。こういった条件を兼ね備えた保育士を確保することは、非常に難しい。それから、ハウスの一般的なボランティアとの協力関係を構築できる方。一般のボランティアが保育そのものをすることはできないが、関連する活動などでボランティアと協力関係を結んでいくことが大切。
- きょうだい児保育について一般的認識が低いこと。母親も病院も、きょうだい児保育について認識が低い。きょうだい児保育の認知度向上に力を入れていく必要があると感じている
- 課題はいろいろあるが、きょうだい児保育の重要性を認識して、先駆的事業として、今後も続けていきたい。
分科会でのディスカッションのポイント
きょうだい児保育のニーズ
「きょうだい児」とは、病気の子ども(病児)のきょうだいのことです。親は病児のことで頭がいっぱいになり、きょうだい児の面倒を十分に見られなくなることがあります。そうすると、きょうだい児の心理的ストレスが大きくなることがあります。そういうときに、親が病児の入院に付き添うときなど、親のサポートとして、きょうだい児保育が必要になる場合もあるということを理解しました。また、きょうだい児に十分に接することができないことに、親が自責の念を感じていたり、逆に気づいていないようなケースがあるという話も出ました。親の状況も踏まえながら、専門的な保育が必要になるだろうとの意見が出ました。
- ファミリーハウスをただの宿泊施設として見るのでなく、病院に隣接しているという利点をうまく理解し、きょうだい児および親の悩みを解決できるというのは、良いことだと思った。
- きょうだいに対する心のケアも大切。母親の目の届かないところをお手伝いする。
- 患者さんでない「きょうだい児」の抱える問題に目を向ける必要性を考えさせられた。反面リスク対応の重要性は高いと感じた。
- 病児の治療が一番になり、ついつい後回しになってしまう、きょうだい児のケアは大切だと思いますが、きょうだい児を預かるということには難しいところがあります。
心理面のリスク
きょうだい児は、ストレスが大きいことが多いので、専門性のある保育が必要だろうという意見が多く出ました。一般の保育所のように、集団の中で保育するのではなく、個別の専門的な保育が必要になると考えられます。
- 今まで我慢していたきょうだいに甘える場所ができたことで、一時的に荒れてしまうこともあり得るとうかがい心してかからねばならないと認識しました。
- リスクを抱えた子どもの保育の専門的知識の必要性について考えさせられた。
- 保育士に特別なスキルが必要になるということ。
感染症のリスク
きょうだい児保育をハウスで実施する場合は、ハウス内に病児がいることもあるので、感染症への対応を十分考えておく必要があります。事例発表のBハウスでは、ハウスの構造上、完全に独立した部屋の利用が可能なので、きょうだい児保育に比較的安心して対応できる環境にあると考えられます。しかし、そうではないハウスの場合は、病児への感染リスクを考えて対応していかざるを得ないという意見も出ました。
- 大型ハウスではきょうだい児保育は感染症の観点から難しいのではないかと感じました。だからこそ他の団体や行政とつながり、病児を持つご家族を様々な方向から支援できるといいのかなと感じました。
病院・地域資源との連携
ハウスで保育を実現することが難しくても、病院や地域と連携して、きょうだい児保育のニーズに対応していく可能性についても意見交換がされました。病院の中で、家族看護という視点から、場合によっては、きょうだい児も一緒に病棟で過ごせる可能性があるという意見が出ました。例えば、ターミナルのときに、きょうだい児の体調がよければ、緩和ケア病棟の家族が泊まれる部屋を利用するというケースなどです。また、ハウス近隣の託児所、保育所、学童保育などの地域資源を活用して、きょうだい児の保育をしていくという可能性も考えられます。特に、Bハウスのように、通院での保育ニーズの方が大きい場合は、短期間の保育になるので、地域資源との連携で、きょうだい児保育の可能性を考えていくことも意味があるのではないかという意見が出ました。
- 病院との連携、行政の助け、地域の保育施設やファミリーサポートが利用できたら、など。