ハウスの活動は、日本では1990年代初頭にボランティア活動として始まりました。その後、行政支援によるハウスや、企業がハウス運営に参加する形態も広がってきています。これまでの約20年間は、ハウスを日本で立ち上げ、広めていく時期であったと言えます。
現在、全国でおよそ125施設が運営されるようになったものの、まだハウスのない県があったり、宿泊施設のニーズがある病院の近くにハウスがないという状況もあり、ハウスを増やしていくニーズは無くなっていません。
それと同時に、既存のハウスは、利用者の役に立つハウスにしていくために、運営の質的向上に今まで以上に努力が必要となります。ハウス運営は、利用者ニーズを第一に考えて運営することが不可欠であり、「ホスピタリティ」をもって対応し、「安心」「安全」「安価(少ない経済的負担)」に利用できるハウスを継続していくことが求められます。
また、社会における支えあいの機能として、ハウス運営はボランティアで成り立っています。こうしたハウス運営に関わってくださる個人・企業・団体などの皆様は、病気の子どもと家族のために協力をしてくださっています。多くの方からの協力で、実質的にハウス運営の質が向上することはもちろんですが、より多くの方がハウス利用者のことを見守っているという思いが、結果として利用者へのホスピタリティを高めることにもつながると考えています。
ハウス運営に関わるスタッフ(ボランティア)は、人数不足や高齢化などで、新しい人材が運営に加わることが必要になってきています。そうなるとこれまでハウス利用者のことを大切に考えて運営してきたスタッフが培ってきたノウハウを、新しいスタッフに伝えていく努力が必要になります。今後ハウスが新設されたときに、そのハウスを運営するスタッフにも、過去20年間のハウス運営のノウハウを伝承したいと考えています。
しかし、これまでハウス運営のノウハウに関する文章化は行われてきませんでした。ホスピタリティをもったハウスを運営していくこと、また寄付やボランティアの協力者を広げていくことは、ハウス運営に関わる一人一人が、努力・工夫して、試行錯誤しながら進めているのが現状です。 加えて、「人の気持ち」を扱うことが活動の根幹のため、系統だったマニュアル化に向かないという特徴もあります。そのため、ハウス運営のノウハウを文章化することが、なかなか進んでいない現状がありました。
そうした状況でも、各団体がこれまで試行錯誤しながらハウス運営してきた中から、ノウハウが蓄積されていることが、ハウス運営者の中で共通した認識になりつつありました。
そこで、今回、各団体で蓄積されているノウハウを、研修会の場で共有することにいたしました。各団体がこれまでの活動を通じて、大切だと感じていること(ノウハウ)を研修会の場で共有し、またそれを報告書にまとめることで、ハウス運営者の人材養成を促したいと計画いたしました。