ファミリーハウス・フォーラム報告書


 子どもが高度治療の必要な重い病気になったとき、治療できる病院が自宅から通いきれない場所でも、家族は子どものために、その病院に駆けつけます。家族が子どもに付き添うのは、治療に関する意思決定をするためだけではありません。闘病中の子どもの気持ちを支えるのは、そばに付き添う家族の存在なのです。付き添い家族が疲れきってしまっては、治療への子どもの意欲に良い影響を与えません。


 病気の時だからこそ大切にしたい「ふつうの生活」を支えるために必要なのが、
病院近くで「わが家」のように過ごせる患者家族滞在施設(ハウス)です。

 ハウスは、少ない経済的負担で利用でき、プライバシーが守られた環境で、ゆっくり寝たり、料理や洗濯など日常生活に必要な設備も揃っています。施設によっては、似た境遇の家族同士が交流できるリビングなどの共有スペースもあり、ぬくもりのある「病院近くのわが家」は家族の精神面をサポートすると言われています。

 1990年代前半から、各地でハウスの必要性を感じた人が、ボランタリーにハウスを開設してきました。1998年と2001年には、厚生労働省によるハウスの建設費補助を受けて、病院が直接運営するハウスも増えました。また近年では、企業がハウス運営に直接参加する形態や、行政・医療機関・NPOの協働によるハウスも増えてきました。現在では約75の運営団体が全国でハウスを運営しているといわれています。

 ハウスの必要性に応え、活動を継続することは社会的使命です。ハウス活動に対して行政からの支援はまったくなく、各地のハウスは地域の支援者の協力を得て非営利で運営されています。1997年にはハウス運営団体の全国ネットワークができ、情報交換や研修を通じて、ハウスの質を高める努力がされています。


 ハウスが担っている機能は、遠方の自宅を離れて闘病生活をおくる家族の「日常性の再構築」を支援することです。
 そのために必要なホスピタリティとは「病気の子どもと家族を大切に受け入れる気持ち」です。ハウス運営者は「相手の立場にたつ」「コミュニティをつくる」「さりげなさ」を意識して子どもと家族を見守り、「安心して過ごせる」「安全に過ごせる」環境をつくるための配慮することが求められます。これは、ハウスがトータルケアにおいて役割を果たすための重要な概念だと考えています。